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将棋小説

   織田 作之助 作品  
      聴雨・蛍 織田作之助短編集

2000年4月10日 初版 
ちくま文庫  
定価 760円

 
私が、この作家を知ったのは、日本将棋集成(窪寺紘一著)という本によるものである。この本の第5章 将棋と文化の中に、将棋を描く近代作家の紹介があり、それまで将棋に文学作品があろうとは思っても見なかったので、非常に興味深く感じたのである。織田作之助は、阪田三吉を主人公にした「聴雨」、「勝負師」を書いており、他に将棋を主題としたものとして、「六白金星」、「可能性の文学」がある。織田作之助の代表作が、「夫婦善哉」 と聞けば、はたと思い浮かぶ人も多いと思うが、その生涯は、1913〜1947年(昭和22年)、若干33歳という短い人生を肺結核により閉じることとなってしまうのである。     
   坂口 安吾 作品  
      散る日本 他19編

昭和48年1月5日 初版
角川文庫
定価220円

 
角川文庫の坂口安吾作品集の中に、「散る日本」というタイトルが付いた本が有る。この本こそが、1947年6月6日に常勝木村義雄名人が、塚田正夫八段に名人を奪われた日を描いた観戦記である。作家の目から、何故、木村名人は、勝負に敗れたのかを考えて述べており、さらには、日本の政治、文学、軍人の有り様にまで言及し、日本が新しく生まれ変わるためのメッセージとして締めくくっている。さらに、この本には、「観戦記」というもう1つの観戦記が収録されている。
  藤沢 恒夫 作品  
     棋士銘々伝

昭和50年6月24日 初版
講談社 (B6)
定価880円
 

将棋小説というものを、普段、本屋で見かけることは非常に少ないと思う。本小説は、実在の棋士たちを主人公に七編の小説が収められている。それぞれの棋士群像が見事に描き出されており、読み応えある作品となっている。主な登場人物は、坂田三吉、木見金次郎、大野源一、升田幸三、大山康晴、角田三男
<目次>
阪田三吉覚え書、大阪の将棋指し、北区老松町、将棋の鬼、名人、角田流空中戦法、投了図
      将棋に憑かれた男

昭和55年8月1日 初版
双葉社 (B6)
定価750円
賭け将棋やインチキ将棋で、その日その日の生計を得ている「くすぶり」という人物を題材にした作品や、実在の棋士を題材とした作品が九編収められている。「棋士銘々伝」とは、四作品が重複。
<目次>
将棋に憑かれた男、くすぶり、一本勝負、真剣屋、弱い勝負師、阪田三吉覚え書、大阪の将棋指し
  夢枕 獏 作品
   風果つる街

1989年8月10日 初版
実業之日本社
定価710円


60歳を越えた老人真剣師 加倉文吉を主人公とする本作品は、「銀狐」、「くすぶり」、「浮熊」、「妄執の風」の4編からなっている。それぞれの内容がとにかく渋い。将棋を生業とする加倉文吉老人が、将棋の繋がりでさまざまな人と出会い、ドラマが生まれて行くわけだが、将棋にとりつかれてしまった人達の悲哀や、ロマンというものを感じさせるストーリーである。「銀狐」は、大道詰め将棋の男との勝負、「くすぶり」は、ある男との賭け将棋の行方を、「浮熊」は、将棋狂いの父と対戦した相手を捜す娘の話、「妄執の風」は、プロ棋士に特例で推挙されるハズが夢かなわなかった男の話である。一気に読めてしまうこの本は、文句なく面白い。読後、心に染み渡る人は、かなり将棋にとりつかれているのでは。 夢枕 獏氏のあとがきに、なんと湯川恵子女史と高校のクラスメートであり、本書執筆にあたっては教えを乞うたとの事。
  米村 圭伍 作品
風流冷飯伝

1999年6月20日 初版
新潮社
定価1500円


本書は、第5回小説新潮長篇新人賞受賞作品である。時は江戸時代、讃岐の二万五千石の小藩である風見藩が舞台である。この小藩に何の目的か、一八(いっぱち)という幇間(たいこもち)がぶらりと訪れ、藩士の飛旗数馬と出会い、この二人を中心に、物語がテンポよく展開して行く。題名の冷飯とは何を指すのかは、家名を継ぐ長男に生まれなかった侍を指しており、飛旗数馬も冷飯の侍であり、1日ぶらぶらと過ごす毎日、藩内のあちらこちらを見て回るのが道楽といった人物である。同様の仲間の侍との関りをを風流に描きつつも、この小藩独特の習わしである男は城を左回りに、女子は右回りに歩かねばならないといったことが、物語にリアル感を増している。先々代藩主時羽光晴公以来の悲願である、城の向きを変える許しを幕府から取り付けるのに、将棋が絡んで藩内は騒然としクライマックスに。はてさてどうなることやら・・・。

  大石 静 原作 葉月 葉子ノベライズ 作品
ふたりっ子 (全3巻)

1996年10月15日 初版、1997年1月14日第1刷、1997年3月15日第1刷
双葉社
定価 各1200円


NHK連続テレビ小説「ふたりっ子」(96年10月7日〜97年4月5日(全150回)のシナリオを小説化したものが本小説である。原作は、コミック版。内容は、大阪の下町、天下茶屋で生まれ育った双子の姉妹が、人生の荒波にもまれながら必死に生きて行く様子を描いている。双子の姉妹のまじめで優等生の姉 麗子、自由奔放の妹 香子は、性格が正反対。香子は、ふとしたことから通天閣の新将棋センターを拠点とする老将棋指し 佐伯銀蔵と出会い、将棋の魅力に取りつかれ、プロ棋士を目指す。麗子は、実家の豆腐屋が嫌で、もっと広く豊かな世界に憧れ、京都大学を受験する。そして、姉妹を中心に、両親、祖父母、恋人、下町の人々を巻き込み、人生の幸福とは何かを描いている。