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ミステリー1/3

斎藤 栄 作品  
    殺人の棋譜

昭和50年7月30日 第17刷
講談社文庫
定価360円

 
この作品が、初めて将棋をミステリーの世界に持ち込んだ作品なのではないだろうか。他にも有るのかも知れないが、将棋界を題材とした作品は本作品が最初と思う。将棋最高位を賭けて、不敗の名人に挑戦する新進棋士河辺真吾八段の愛娘万里が誘拐されてしまう。果してその犯人は誰なのか。三番勝負の対局と、同時進行で犯人追求劇がうまく絡み合ってラストへと繰り広げられるストーリーは、読者を飽きさない。本作品は、将棋関連によるトリックは特にはないが、棋士が主人公という点で記念碑的な作品と言える
     
 
    新・殺人の棋譜

昭和63年3月15日 第17刷
講談社文庫
定価420円

 
「殺人の棋譜」から、17年後の物語となる本作品は、前回誘拐された棋士河辺真吾の愛娘20歳になった真理が、再び事件に巻き込まれて行方不明となってしまう。前作同様名人戦を戦っている最中に事件は起きるが、44歳となった棋士河辺は名人として、若手棋士山本八段との防衛戦を戦うという設定である。非常にテンポの良いストーリー展開であり、推理小説というより、サスペンスドラマの様である。内容的には浅間山荘事件を彷彿させる。美しい娘に成長した真理の運命は・・・。本文中に挿入された名人戦の棋譜と指し手の微妙な心理、対局風景描写をうまくストーリーの中に溶けこまして、事件と絡まさせている点が面白い。本作品には、行方不明となった真理からのメッセージとして棋譜が暗号として使われている。

 
    ブライダルマーダー

1998年12月15日 初刷
徳間文庫
定価514円

本作品は、「将棋最高位」獲得に野心を抱く棋士を愛する女性が、殺人を犯してしまうまでの手記を題材とした小説「三日月城の殺人」を書き、見事女流ミステリー大賞に入選した作者の松原良英自身が、何者かに殺されてしまうという内容である。 本作品の構成が少々変わっていて、前編に手記の内容を現実の如く書き綴り、後編として被害者となった作者とシリーズで登場する探偵役の二階堂日美子の登場。この2部構成で読者を2度楽しませるという工夫がされている。将棋関連トリックは無いが、本文中に、<将棋は歩から>、<将棋大観>といった名著の記述、また、斎藤氏自身仲人をされたという女流棋士の中井広恵さんの結婚記事を日美子が、作家 良英の書棚に有った将棋雑誌から見かけるというくだりが有る点が、斎藤氏の遊び心を感じる。

洞爺・王将殺人事件

1999年5月20日 初版
光文社文庫
定価495円

退職刑事の星月源吾を主人公とするシリーズ作品の1つであり、北海道・洞爺湖温泉のホテルで女流名将戦3番勝負の決勝3局目が行われ、そこに星月元刑事が家族で訪れ、事件に巻込まれるという設定である。事件は、かつて大山名人が愛用したという対局用の駒がすり替えられ、そして記録係の小学生の妹が姿を消すというところから、果ては殺人事件に発展して行くというストーリーである。犯人の動機と意外性が面白い。記録係の奨励会3段の苦悩にも触れておりストーリーにうまく織り込んでいる。ちなみに駒は、宮松作の「錦旗」TVドラマ化作品

将棋駒殺人事件

平成8年4月1日 初版
廣済堂文庫
定価550円


この本には、以下の7つの短編ミステリーが収録されている。「一枚の飛車」/遺品の一枚の飛車から、自分の駒師の祖父にまつわる秘密を探ろうとするが・・・。「四桂の宣言」/兄から妹に送られてきた手紙には、四つ桂馬が配置された詰将棋図が書かれており、自分の危険な状態を伝える秘められたメッセージが・・・。「狂った一歩」/会社の金を横領し自殺をしようとした男が、悪友からの詰将棋から悪の道に進んで行く。「曲詰の女」/客の忘れた本の間から1枚の詰将棋図を手にしたタクシー運転手の身に降り掛かることとは・・・。「王将ロンドンに死す」/交換殺人でアマ王将の男を殺すことになった夫婦の行方は如何に。「ある女流棋士の死」/新鋭女流棋士の死と人骨で造られた王将駒にはどんな関係があるのか・・・。、「昭和・吐血の決戦」/天野宗歩が現代に現れ、コンピュータ棋士と対局することになったのだが、果して結果は・・・。

鎌倉京都殺人事件

平成12年3月1日 初版
廣済堂文庫
定価552


女流棋戦を題材とした長編本格ミステリー作品であり、将棋ミステリーとしては最も最近の作品である。二階堂日美子の知人の椎野緋呂子から従妹の美雪に脅迫電話があったとの相談を受けるところから事件は始まる。美雪は、女流最高位戦三番勝負を戦う十七歳の棋士であり、緋呂子は美雪の付き添い役をしている仲である。対局場の様子、関係者の描写等、女流棋戦の模様が良く伝わって来る作品である。それにしても、対局者用のおやつのことから、座布団のことまで対局者の気持ちを考えて配慮する必要がある等、描写が木目細かい。対局前日に対戦相手に尋ねてきた女性が殺され、そばにカモ川と記された血文字が残されており、この謎にタロット日美子が挑む。

女流将棋殺人事件

平成9年5月1日 初版
廣済堂文庫
定価543


女子高校生 女流名人の花柳真子をヒロインとする短編集であり、父親が警視庁の警部という設定である。難事件を次々に解決するヒロインの活躍が面白い。 残念ながら、本ヒロインの登場は、現時点では、本書のみである。 欲を言えば、ヒロインの個性がもっと強烈にあればと思う。 「幽霊と穴熊」という作品では、ある将棋の局面図が失踪した人物からのメッセージとして登場させている。さらに「女流棋士誘拐事件」では、仲良しの女流棋士が、何者かに誘拐され身代金要求の手紙の中に本人の書いた詰将棋図に囚われた場所を暗号として知らせてくるといった仕掛けが登場する。 収録作品は、以下の6編。「花柳真子・決死の推理」、「幽霊と穴熊」、「紅蓮の殺人」、「砂将棋殺人」、「女流棋士誘拐事件」、「バレンタインの将棋」

完全アリバイ

平成4年8月20日 5版
廣済堂文庫
定価440円
若手の産婦人科医武宮章吾と新妻の瞳は新婚旅行先の熱海のホテル「大幸閣」で晩餐を楽しんでいたのであるが、その最中、瞳が化粧直しに席を立ったのを最後に、瞳が誘拐されてしまう。部屋に戻った際に、かつての親友吉村から電話が入り、「瞳は預かった、もし彼女を本当に愛しているのなら、南アルプスの八紘嶺まで連れ戻しに来い。」と挑戦される。章吾は、山登りの経験はなく、姉夫婦に応援を頼み、決死の登山へと向かうのであるが、その頃、川崎のアパートで若い女性がベランダから転落死するという殺人事件が発生する。この二つの事件には、巧妙なアリバイトリックが隠されており、意外な犯人が最後に浮び上る。将棋関連に関しては、転落死した女性の部屋に残されていた将棋盤に大道詰将棋が残されており、紙面にその図が示され、読者にも楽しめる様になっている。解答付。トリックには関係なし。

振り飛車英五郎

昭和58年9月25日 初版
双葉ポケット文庫
定価360円


賭将棋指しの大徳寺英五郎が活躍する痛快娯楽ミステリー短篇小説である本作品は、英五郎が行く先々で事件に巻き込まれ真相を解明して行くというストーリーである。主人公の英五郎は、三十歳でサラリーマンを辞め、勝負師の生き方を選んだ人物であり、賭将棋指しを実に巧みにサスペンスストーリーに盛り込んであり、非常に面白い作品である。本作品には、「珊瑚の駒」、「足摺岬の罠」、「姫路城で会った女」、「消えたスター・ルビー」、「恍惚の眼」、「炎の海に消えた」の計6篇が収められている。これら短篇は、時系列的になっており、途中、「姫路城で会った女」で出会った二十代半ばの女性、曾根玲子が「恍惚の眼」、「炎の海に消えた」、さらには、次作品のハメ手破りの英五郎の収録作品にも登場し、共に行動することで、ストーリーの根幹をなしている。 英五郎の武器は、投げ銭ならぬ投げ銅駒三十三枚を所持。

ハメ手破り英五郎

昭和59年1月25日 初版
双葉ポケット文庫
定価360円

賭将棋指しの大徳寺英五郎が活躍する第二弾、ハメ手破り英五郎は、振り飛車英五郎の完結編である。全国を渡り歩くその地で遭遇する様々な事件、殺人事件有り、イカサマ有り、サスペンス有りの前作同様、楽しめる作品となっている。英五郎から、穴熊崩しの手順を不正に入手しようとする賭将棋の相手との死闘を描いた「穴熊崩し」、仙台、秋保温泉で賭将棋に勝った賭金の50万円を何者かに盗まれてしまうが、1番怪しいと睨んでいた男が殺されてしまう。男が虫の息で英五郎の掌にと金のとの文字を残して息絶える「と金殺人」、鳴子温泉郷で偽英五郎に出くわし、対局をすることになる「将棋地獄」、山形県酒田市で殺された兄の為に、犯人と思われる男と対局する妹の2枚落ち指導を官能的に描く「鸚鵡返し」、八郎潟の町での元プロ棋士に指された角頭歩突きの将棋と前作登場の曾根玲子との再会をする「奇手破り」、そしてクライマックスを迎える十和田湖では、遊覧船で見知らぬ女から声をかけられ、危険な罠へと引きずり込まれる「鬼神の駒」の計6篇のストーリー
黒い王将

昭和55年8月25日 初版
集英社文庫
定価480円

棋界の裏街道の名人位に挑む賭将棋師 神代賢が主人公の本作品は、宿敵古瀬十三郎との死闘をメインテーマとして数々のショートストーリーを構成しており、何れも面白い。激闘篇と雄飛篇の2部構成となっているが、特に明確な区分けがある訳ではない。振り飛車英五郎の大徳寺英五郎と主人公が重なるが、本作品の方が、推理小説というよりアクションに重きを置き、賭将棋師 神代賢の個性を前面に打出している。封じ手を、連れの女性に飲ませる将棋愛好家との戦い、ハイジャック犯との賭け将棋の行方、銀行強盗との対決等々、そしてクライマックスは、宿敵古瀬十三郎との対決とテンポ良くストーリーが展開される。是非、新たな賭将棋師をテーマとした作品を望む。
二階堂警視の呪縛

1998年8月25日 初版
光文社
定価781円

女王位戦を戦う現女王位の中臣里恵五段と挑戦者の海道美恩三段の三番勝負に絡めて、外国人の殺人事件が次々と起こる本作品は、現在の女流棋戦を題材とし、斉藤栄氏自身が、将棋連盟に寄贈した女王駒、これは、王将ではなく女王と彫った駒とのことであるが、実際に女流対局に使われたとのことで、この駒を登場させている。この女王駒が、第2局目の際、挑戦者の海道美恩三段の手から離れなくなるというストレスによって身体が硬直するアクシデントが発生するのであるが、このことと殺人事件とをうまく結びつけている。二階堂警視と部下の夢野桂香が事件の謎に挑む。

龍王殺人事件

1994年9月15日 初版
双葉文庫
定価560円

全7つの短編ミステリーを収録する本書には、題名ともなった龍王殺人事件、さらに、将棋道場殺人事件、家康の殺人の3編が将棋関連小説である。龍王殺人事件は、大学助教授の物部が、同じ高校の将棋部で、主将、副主将をやっていた頃からの旧友八代の妻琴子と不倫関係にあり、将棋の勝負で、堂々と八代から琴子を奪うチャンスを得るが敗れてしまう。さらに琴子と共謀し、物部を殺害しようとするのだが・・・。本編には、詰将棋が犯人特定のヒントとして使われている。将棋道場殺人事件は、怪盗101号を追っている2人の刑事が、将棋道場に見回りに入った際、道場主の殺害現場を目にし、犯人を追いつめるというストーリーである。本編には、階登詰(はしごのぼりづめ)という詰将棋が紹介されており、ダイイング・メッセージの俳句と絡めて浮かんできた意外な犯人とは・・・。家康の殺人は、豊臣秀吉の天下から、徳川家康へと移らんとする時代の話であり、小田原陣中での両者の将棋対局の模様がお互いの腹の探り合いであることを描いているところが面白い。他、二重心中殺人、重ね焼き殺人、悪夢の貞女、最後の逆襲のミステリーが収録されている。
王将殺人

1994年7月20日 初版
光文社文庫
定価580円
人間地獄・殺しの技法

1994年3月15日 初版
双葉文庫
定価500円
神と悪魔の王手

1990年9月5日 初版
天山文庫
定価480円
神戸天童殺人事件

1998年2月15日 初版
徳間文庫
定価514円
五人の追跡者

1994年11月30日 初版
徳間オリオン
定価780円
魔扇子殺人事件

平成8年10月1日 初版
廣済堂文庫
定価550円